平成25年4月23日
4月15日から19日までの間、英国ロンドンにおいて、国際海事機関(IMO)第100回法律委員会(LEG100)が開催され、我が国からは、国土交通省、(公財)日本海事センター、(一社)日本船主協会等から構成される代表団が参加しました。
今次会合における主な審議内容・結果は、以下のとおりです。
前回の第99回会合(LEG99:昨年4月)において本件が新たにIMOの成果目標に加えられたことを受けて、今次の新規議題として『船上で重大犯罪・行方不明者が発生した後の証拠保全および関係者の心理的ケアに関するガイドライン』の検討が行われた。英国、国際クルーズ船協会(CLIA)、国際船長協会連盟(IFSMA)、国際海空港警察協会(IAASP)による本ガイドライン案は、詳細な検討のため、関心を有する国の参加によるワーキンググループにおいて、議論された。
検討の結果、本ガイドライン案においては、報告の対象範囲、船内犯罪発生時における関係国間の協力体制、船長の役割、行方不明者の発生時における対処、関係者に対する心身ケアについて定められるとともに、発生事案に関する関係者からの聞き取り様式及び証拠物件の保全措置一覧が示された。
このうち特に、我が国及び他の数カ国から、船長が行うことを想定した証拠保全措置を記載する附属書の内容が詳細に過ぎるとして、犯罪捜査の専門家ではない船長に過大な負担を負わせることは適切ではない旨発言があった。それを踏まえ、ワーキンググループは本ガイドラインが拘束力のない文書であり、船長に付加的な責任を負わせるものではないことを改めて確認するとともに、当該附属書に示された証拠保全措置が犯罪調査の専門家向けに作られた別のガイドラインから引用されたものであることを明示しつつ、必要な際に船長が活用できる対応策という位置づけであることを確認した。
本ガイドライン案は本会議で承認され、IMO総会に決議案として回付されることとなった。
LEG99において成果目標外で検討を継続していくこととされた、洋上石油開発による越境油汚染損害に対する責任及び補償に関する新たな国際的枠組みの構築について、本件の提案者であるインドネシアより、同国の主催で行われた第2回洋上石油開発による越境油汚染損害に対する責任及び補償に関する国際会議の結果報告が行われた。
本件については、洋上石油開発に起因する越境油汚染損害に対する補償に対処する新たな国際的枠組みの構築にあたり、IMOが主体的関与を行うべきとする立場と、それに反対する立場から、多様な議論が展開された。結果として、LEG100は、問題の重要性を確認し、同様の既存の協定を有する加盟国に情報提供を促すとともに、今後とも、インドネシア主導の非公式協議グループにより検討が続けられることに同意した。
2012年11月、IMOと国際油濁補償基金(IOPCF)の共同開催により2010年HNS条約に関するワークショップが開催され、2010年HNS条約に基づき、同条約が発効されるまでの間、締約国が行わなければならないHNS受取量報告の方法について、ガイドライン(案)が策定されたことを受け、そのワークショップの内容の報告とガイドライン(案)の提案がカナダより行われた。
LEG100は、同ガイドラインを承認するとともに、2010年HNS条約の早期発効に向け、加盟国の批准を促した。
法律委員会の第100回の開催を記念して式典が行われた。関水IMO事務局長、法律委員会議長、これまでの法律委員会の活動に関わりの深い海事法専門家のほか、国際海洋法裁判所長である柳井俊二氏が招かれ、講演を行った。
LEG100結果概要(PDF形式)
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