平成26年3月28日
世界における船舶の解撤(以下、シップリサイクル)は、主にインド、バングラデシュ等の開発途上国を中心に実施されており、シップリサイクル施設における労働者の死傷事故や環境汚染等が問題視されてきました。2005年末の第24回IMO総会において新規条約の策定作業の開始が決議され、日本は世界有数の海運・造船国として、新規条約の起草作業を主導した結果、2009年5月15日に香港において「2009年の船舶の安全かつ環境上適正な再生利用のための香港国際条約」(通称、シップリサイクル条約)として採択されました。また、条約の施行に必要な各種ガイドラインは2012年10月に整備が完了し、条約の批准に向けた環境は整っております。
このような状況の中、2013年11月15日にシップリサイクル条約に準拠するEU域内法改正が採択(同年12月30日に発効)され、EU加盟国にシップリサイクル条約の批准を促すEU理事会決議の策定も進められております。また、関連業界等においては、条約の発効に先立ち、自主的に条約の一部を実施する動きも進んでおります。
これらの動向を踏まえ、我が国の条約批准に向けた検討を行うため、「シップリサイクル条約の批准に向けた検討会」(委員長:角洋一 横浜国立大学大学院工学研究院教授)を昨年12月に設置しております。第1回検討会においては、条約の対象となりうるシップリサイクル事業者の実態を適切に把握するための調査を行うとともに、現状の国内関連法制度の状況を整理して検討を進めることとなりました。これらを踏まえ、今般、第2回検討会を以下の通り開催しましたので結果をお知らせします。
平成26年3月25日(火)10:00~12:00
合同庁舎2号館15階海事局会議室
添付資料のとおり
(1)国内のシップリサイクル事業者の実態
国内のシップリサイクル事業者を対象としたアンケート及び現地聞き取り調査の結果に基づき審議された。概要は以下の通り。
[1] 過去10年間において、国内シップリサイクル事業者が解撤した船舶の内、国際総トン数500トン以上の外航船の占める割合は隻数ベースで3%に留まるものの、国際総トン数500トン以上に相当する内航船等を含めると、4割以上に上ることが明らかとなった。また、解撤船舶の船種としては、漁船(31%)や官公庁船(27%)の占める割合が高いことが確認された。
[2] 国内のシップリサイクル事業者の多くは、条約に関心を持っているものの、内容についてはあまり把握していないという状況であることが報告されたため、シップリサイクル事業者に対する条約内容の周知・啓発も課題とされた。
[3] 国内のシップリサイクル事業者が条約発効時に課題と考えている事項として「環境対策」が最多であった。
[4] シップリサイクル事業者による環境対策の取組事例として、解撤場における排水用側溝や油水分離装置の設置、環境モニタリングの実施などが報告された。
[5] 条約上のシップリサイクル施設要件への適合は困難と考えている事業者がいる一方、条約の非適用船を解撤する施設についても条約要件の適用を期待する者もいた。これら非適用船については条約上「合理的かつ可能な範囲で条約に合致するように行動することを確保」しなければならないことから、その扱いについて今後検討していく必要があるとされた。
(2)条約要件と国内法制度
シップリサイクル施設に関する条約要件と主に環境関連の国内法制度の適用状況について報告された。この結果、シップリサイクルに伴う産業廃棄物の適正処理や有害物質の管理等については、廃棄物処理法を始めとする多岐に亘る国内関連法制度が整備されており、これら関連法令には報告徴収、立入検査、罰則等が規定されていることから、条約が求めるシップリサイクルにおける環境対策は概ね対応可能と見込まれることが確認された。一方、関連法令に基づく要件を横断的に確認するとともに、シップリサイクル施設や船舶リサイクル計画の承認等を担保する国内法制度は無いことから、今後新たな制度化が必要とされた。
(3)今後の予定
今年度の議論を踏まえ、来年度も引き続き主要解撤国等の動向を注視するとともに、条約要件に関連する労働安全衛生関連の国内法制度の整理をすることとなった。また、国内法制度化にあたり適用船舶の範囲等について検討を進めていくこととなった。
報道発表資料(第2回検討会開催結果)(PDF形式:138KB)
資料1 シップリサイクル条約の経緯と概要(PDF形式:175KB)
資料2 シップリサイクル条約の批准に向けた検討会 委員名簿(PDF形式:73KB)
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