平成20年10月3日
IMO MEPC58が10月6日から10日までロンドンのIMO本部で開催されます。主要審議事項は以下のとおりです。
1.MARPOL条約附属書VI(大気汚染防止規則)改正案の採択
2.船舶からの温室効果ガス(GHG)削減対策
3.シップリサイクル新条約案の承認
4.バラスト水処理システムに使用する活性物質の承認及び条約実施ガイドラインの採択
10月6日から10日まで、IMO第58回海洋環境保護委員会(MEPC58)がロンドンのIMO本部で開催されます。
我が国からは、国土交通省の染矢技術審議官他、(独)海上技術安全研究所その他の関係海事機関・団体により構成された代表団が出席し、対応することとなっています。
今次会合における主要審議事項は以下のとおりです。
(1)背景・経緯
船舶からのNOxやSOx等の排出ガスによる大気汚染の防止については、MARPOL条約附属書6)に規定され、附属書6)が発効した2005年5月より規制が実施されています。現在の規制値は附属書6)が採択された1997年当時の技術水準に基づき設定されているため、将来の技術水準の向上を踏まえて、附属書6)発効後、規制を見直すこととされました。このため、2005年7月に開催されたMEPC53において規制見直しを開始すること及び検討項目が合意され、下部小委員会である、ばら積み液体貨物・ガス(BLG)小委員会における技術的検討を経て、本年4月に開催されたMEPC57にて、附属書VI改正案が取りまとめられました。
(2)審議内容及び対応の基本方針
今次会合では、改正案の採択に向けた審議を行う予定です。本改正案は、2016年より大気環境の改善が必要な海域に限定してNOx規制値を現行規制値より80%削減する我が国の提案が取り入れられたもので、我が国は改正案の採択を支持します。ただし、改正の発効日について、我が国は、発効日を2010年3月1日から2010年7月1日に変更する提案を行っているところ、その実現に努めます。なお、本発効日の変更は、2010年春に開催されるMEPC60において規制の実施に必要なガイドラインの最終化・採択を行った上で、条約の発効を迎えることを可能とするもので、新ルール導入時の混乱を極力回避することを狙うものです。
(1)背景・経緯
気候変動枠組み条約京都議定書は、その対象を附属書1)に掲げる先進国に限定しており、国際海運については、第2条第2項において、国際航空とともに専門の国際機関(IMO,ICAO)を通じた作業によって、GHG排出量の抑制を追求することとされています。
現在、IMOにおいては、国際海運からのGHG削減に向け、技術的な手法(船舶のエネルギー効率の改善、代替エネルギーの活用等)、運航上の手法(減速航行、最適航路選択等)、経済的な手法(燃料油課金、排出量取引等)についての検討が進められており、本年4月に開催された第57回海洋環境保護委員会(MEPC57)において、我が国からも新造船の燃費効率を評価する指標(CO2排出設計指標)を策定することを提案しました。MEPC57での審議の結果、設計指標の有用性・必要性が認められ、本年6月に開催されたGHG中間会合では、我が国の提案である波や風のある実海域を考慮した指標の策定が合意され、我が国及び関心のある国等が中心となって作業を進めていくこととなりました。
(2)審議内容及び対応の基本方針
設計指標に関し、今次会合においては、指標算出のための各種ガイドラインの審議が行われる予定となっています。我が国からも、今次会合に先立ち、設計指標に含まれる実海域における速度低下の係数(fW)に関するシミュレーションガイドライン案及び標準fWカーブ案及び設計指標における省エネ技術によるCO2排出削減効果の反映方法について提案を行っており、これらの実現に努めます。
また、既存船対策を含むGHG排出削減の枠組み(経済的手法等)については、GHG排出削減のアプローチとして、国際海運全体のGHG排出総量規制よりむしろ、個船毎のエネルギー効率の改善が最も有効な方法の一つと考えており、これを踏まえ対応するともに、経済的手法については、他の手段と同様、全ての外航船舶に対し、一律に適用させること、手法がシンプルかつ実行可能であって抜け道が無いことが必要であり、同時に途上国も受け入れ可能な方策案について検討が進むよう対応することとしています。
(1)背景・経緯
シップリサイクル(船舶の解撤)に関しては、船舶とリサイクルヤードの要件を定める新条約の策定作業が進められており、今週、ロンドンのIMO本部にて開催されたシップリサイクル作業部会中間会合(以下、中間会合)において、条約草案に関する具体的な審議が行われました。今次会合において条約案が承認され、2009年5月11~15日に香港にて開催予定の外交会議において採択される予定となっています。
(2)中間会合
条約草案に残っている未合意事項(シップリサイクル計画の承認方法等)の多くに合意することができ、今次会合における承認に向けて前進しました。早期批准を促進するための条約発効要件について、我が国より提案した案(締結国と船腹の組み合わせに解撤能力を組み合わせる)が多数に支持され、今次会合において更に検討を深めることになりました。
(3)今次会合における対応の基本方針
これまで条約策定作業を主導してきた我が国としては、現草案の示す方向性について基本的に支持し、広範な関係業界(海運、造船、舶用工業、リサイクル)の権利と義務のバランス、主要リサイクル国による条約義務の履行の確保、多数の国による早期批准の促進に配慮した合理的な条約案を目指します。
(1)背景・経緯
バラスト水の移動に伴う生物の移動防止を目的として、2004年2月にIMOにおいてバラスト水管理条約が採択されました。同条約では、2009年新船(バラスト水容量5000m3未満)から段階的に一定の生物殺滅性能を有するバラスト水処理システムの搭載を義務付けることなどが定められています。
(2)審議内容及び対応の基本方針
(a)バラスト水処理システムに使用する活性物質の承認
今次会合では、バラスト水処理システムに使用する活性物質の承認について審議が行われる予定であり、我が国からはTGコーポレーションが開発した「TGバラストクリーナー」及び「TGエンバイロンメンタルガード」について、基本承認を申請しているところ、承認が得られるよう対応します。
(b)バラスト水管理規制条約実施のためのガイドラインの採択
2004年2月に採択されたバラスト水管理規制条約の決議に基づき、同条約を実行するための指針として、14項目のガイドラインが作成されることとなっており、これまでに13項目のガイドラインが採択されました。今次会合では、残る最後のガイドラインである「バラスト水のサンプリングに関するガイドライン」(G2)について、採択を見込んだ審議が行われることとなっており、我が国は、ガイドラインの採択に向けて対応します。
会合の結果については、10月14日(火)15時に国土交通省会見室において記者レクを行います。
MARPOL条約附属書VI改正案の概要(PDF形式)
国際海運からのCO国際海運からのCO22排出抑制に向けた取組排出抑制に向けた取組(PDF形式)
シップリサイクル条約案の要件(PDF形式)